10月7日(月)は、月に一度の「学校を休みがちな子の親の会」で、世話人を含めて7名の参加でした。
「男の子」のプライドの高さであるとか、お母さんどうしで共感的に語り合う場面がたくさんあって、いつものように有意義な時間を過ごせたのですが、それぞれの近況報告の中で参加者から「医師から放課後等デイサービスの利用を勧められたのだけれど、行った方がよいのだろうか」という話がありました。
最近はこの「放課後等デイサービス」にありとあらゆる期待が寄せられているように感じられます。放課後等デイは「福祉サービス」なのですが、「医師や学校の先生から制度の存在をはじめて聞いた」という保護者が増えており、誤解も多いです。この機会に、不登校と放課後等デイの関係についてまとめておきます。
まず、大前提として放課後等デイサービスは「障害福祉サービス」です。児童福祉法上の「障害児通所支援」であり、利用するには子どもに「障害」がある、と言えなければいけません。そのため、医師からの「診断書」や「意見書」が必要とされます(もちろん「障害者手帳」でもかまいません)。
家庭や学校で子どもがさまざまな困難を抱えていたとしても、その原因として「障害」を認めることに保護者や子ども自身が心理的抵抗を感じるならば、利用は難しいでしょう。
次に「不登校」との関係ですが、放課後等デイサービスは「学校に通っている子どもが放課後に使う」ことを想定した制度です。内容としては「学童保育」的なデイもあれば、「療育」的なデイも(数は少ないですが)あります。それでもみんな「放課後」の支援であるという点には違いがありません。
「では、学校の授業時間に放課後等デイサービスを使うことはできないのか?」。制度的には明確じゃありません。それぞれの事業所は放課後等デイサービスの提供時間を運営規程で定めていますが、開始時間を朝からにしてはいけない、という法的な根拠はないため、事業所として受け入れることは可能だろうと思われます。
ただし、サービスの利用時間は事業所からの実績報告を通じて自治体が把握します。他の利用児童とは違い、学校の授業時間内に放課後等デイを使っていれば、すぐに行政からの確認があるでしょう。また、サービスの利用にあたっては「相談支援事業所」に利用計画を作成してもらい、その計画を行政に提出するのが原則です。授業時間内に放課後等デイを利用する計画を自治体が認めない可能性は高いと思います(もちろん自治体ごとに対応が異なることはありえますが、精華町に関しては認められません)。
ネット上を見ると「不登校の子が放課後等デイを使って何が悪いのか」という主張も見られます。それが放課後支援の範囲であるならば何ら問題ないでしょうが、日中に通える場所がないからと「学校の代わりに」「平日の昼間の居場所として」高い頻度で使うことには賛成できません。それを認めてしまえば、「フリースクール」代わりの放課後等デイサービスが誕生するでしょう。
放課後等デイサービスの運営費は、9割以上が公的な給付費です。年収が900万近い世帯までは1か月あたりの上限4600円で何日でも使えます。つまり、放課後等デイに日中通うことが当たり前になると、不登校の原因に「障害」が認められる子どもだけに安価な居場所ができ、高額な費用負担を伴うフリースクールとのあいだで著しい不公平が生じるという側面もあるわけです。
では、放課後等デイは「不登校の子」と関係をもつべきではないのか? そんなことはありません。厚労省の出している放課後等デイサービスガイドラインでは、不登校の子どもについて、次のように書かれています。
学校や教育支援センター、適応指導教室等の関係機関・団体と連携しつつ、本人の気持ちに寄り添って支援していく必要がある。
その子どもが学校を休みがちである背景に「障害」が考えられうる場合、子どもにも保護者にも適切な支援や配慮が必要です。「教育」「学校」の内部で適切な支援が提供されることをまずは目指したとしても、うまくいかずに学校との距離が広がるばかりであったり、学校以外に安心して過ごせる場所がほしいと考えたりすることは数多くあるでしょう。
そのとき「学校代わり」ではなく、支援者との関わりを通じて「障害」について理解を深めたり、個別性に高く配慮された環境の中で自信や安心を深めたりする場として、放課後等デイサービスが「計画的に」使われることが望ましいと思いますし、そのために日中の放課後等デイ利用を認めるような自治体が増えていくことを期待します。
この「計画的に」というのが実は難しく、経営的な観点から「どんどん使ってほしい」事業所と、居場所がなく「行ける場所なら毎日でも行きたい(行ってほしい)」親子の利益が一致してしまうため、放課後等デイは(不登校でなくとも)利用がずるずると増えやすい制度です。計画の立案とモニタリングを担当する「相談支援」の役割や専門性もあわせて、今後の課題になるでしょう。
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